Styling Collection 川崎 元晴

STYLING COLLECTIONのルーツと、秘められた想いを探る

Styling Collection 川崎 元晴

-川崎さんのこれまでの『STYLING COLLECTION』との関わり方ってどのようでした?

実行委員長は今年で3年目、今回、任期が終わるということです。

その前は、ずっとこのプロジェクトに7、8年なんだかんだで参加しています。最初は、いちメンバーとして参加していました。従来、2年で実行委員長は代わっていたんですけれども、1年延長みたいな形でやりました。やりたいことを形にするのにもう一年あるといいなと思いました。

-形にするのにあと1年必要だった、その形っていうのはなんだったんですか?

理美容業界の形態の変化というか、ヘアメイクだけでは売り上げがつくれなくなってきたり、トータルビューティー化してきたり、それに伴いサロンで売るメニューが変わってきてたり、昔のようなコンテストの形では、実際に現場のスタッフの教育にならなくなってきているというか。

コンテストのための練習をして、さらにサロンで売り上げを上げるための練習をしなきゃいけないから、お店のオーナーも、スタッフも、コンテストに出るよりも、お店の売り上げを上げるための練習をしたほうが、自分も成長できるし、良くなるって捉え始めたときに、だんだんコンテストの魅力がなくなってきているという、ちょうどそういう時代に差し掛かっていたんじゃないかと思って。

その中で、少子高齢化とか、美容師になるという人が減少傾向にあることが顕著に現れ始めたタイミングで、これからSTYLING COLLECTIONをどのように形にしていけば、現場の美容師さんの教育にも繋がり、STYLING COLLECTIONを通してサロンがもっと魅力づくりをできるかと考えたときに、いろいろと取り組みたいことがありました。

STYLING COLLECTIONのルーツと、秘められた想いを探る

-従来のコンテストの形では、現場の教育というか、普段のサロンワークにつながらないというのは、どういう部分が?

考え方によっては何やったって教育にはつながるとは思うんですけれど、例えば昔で言うと、パーマ全盛期の頃があって、メイン競技がワインディングという競技で、それをひたすら練習していれば、お店でお客さまのパーマのオーダーがいっぱい入ったときに、即戦力で使えた時代もあったと思うのだけど、今はそういったくるくるパーマの時代でもない中で、ワインディングの練習するぐらいだったら、スタッフにカットの練習をさせたほうが即戦力になるから、みたいな流れがあり、これもさっき言った従来の形では魅力がないという一つ。

成人式も、今の成人式って伝統的な和のスタイルから、少し崩したスタイルなんかが若い子たちに人気が出てきていて、成人式を迎えるときに普段やってもらっている美容師さんに担当してほしいという声を増やしたいと思って、「振袖トレンドアレンジ部門」というのをつくりました。

従来の成人式スタイルとは少し違った、ちょっとカジュアルで崩したトレンドを取り入れた競技なのですが、これをやることで、今の美容師さんに着付けの興味を持ってもらうとか、着付けの技術をもっとレベルアップしてもらうということも、狙いの一つでありました。

「スピードカット」という競技に関しても、今のトレンドのスタイルを審査員の方に幾つか選んでもらい、それを選手の人に事前告知して、当日、その中から1作品だけが発表されるんですね。

それをパッと見て、記憶して、その場で作るという競技なのですが、

これって、若手のスタイリストがサロンでよくやるコピーカットという練習方法をそのまま競技にしたような形であったりとか、そんな今のトレンドのスタイルとか、サロンで売れるスタイルの延長線上に、それをもっとクリエイティブにしたものを作ることがSTYLING COLLECTIONなんだということをつくりたかったというのがあります。

STYLING COLLECTIONのルーツと、秘められた想いを探る

-川崎さんがSTYLING COLLECTIONで形にしてきたもの、またこれから受け継がれていくものを教えてください。

「全日本理美容選手権大会」というのが正式名称でしたが、2017年に商標を取って正式になりました。

それも一つの転換期なのかなと思ったのですが、その全日本理美容選手権大会っていうところが根幹にあって、SPC GLOBAL本体もそうですけど、理容と美容が一つになっているんです。

理容のメンズの技術の頂点と美容の女性のスタイルの頂点を一つの大会で行われる中でずっと培われてきたのが、メイン競技の総合部門ではないかなと思っています。

男性のスタイルと女性のスタイルの両方の合算得点で最高得点を取った人がその年の総合チャンピオンになる。まさに今、理容と美容の垣根がなくなってきていて、男性も美容室でメンズ専門店ができてきたりとか、理容店でも、女性客が行きやすいサロンができてきたりとかっていう、理容だ美容だってなくなってきている中で、いち早くそういったものを競技会にしてきました。

僕が3年間の中でやりたかったもう一つは、「S-feh」です。
ヘアーショーをコンテストにしているというのは、このSTYLING COLLECTIONならではです。

S-fehで何が良いかというと、団体戦というか、みんなお店の看板を背負って一つのチームになるというか。今、職場はチームになって、お客さまに向かっていかないと、繁盛しないんじゃないかなというのを思っていて。それを学生時代で言う文化祭みたいな、チームとして一つの作品を作り上げ、それを他店と競い合いながらも、自分たちのお客さまに売るスタイルを磨き合っていくというのは、すごく価値があると思っています。おかげで、限られた地区で開催していたS-fehは今年全国的に広げることもできました。一番は、S-feh学生部門に美容学校が参加できるということに対して、すごく好意的に思ってくれているので、良かったなと思います。

そしてこれは、これから次の時代に向けての新たな形じゃないかなと思うのですが、コンテストだけのエッセンスではないというか。例えば、美容学生が参加しやすいように、今度は、未来の美容業界に興味を持ってくれる子どもたち、高校生が見に行きたくなるようなイベント性を持ったものをSTYLING COLLECTIONの中で披露できるとか、そういった高校生や美容学生、それから、美容師さんや、もっと言うとビューティースタッフ、美容師以外の美容業界の人たちも巻き込んだような、一つの美容オリンピックみたいな、そんな美に携わる人たちが、ただ競い合うだけじゃなくて、共感できる、そんな未来がSTYLING COLLECTIONの可能性にはあるんじゃないかなと思います。

-STYLING COLLECTIONの完成形というのはあるのでしょうか?

常に川上に立ち、時代や業界の流れを見て、我先にチャレンジしていくのがSPCですし、STYLING COLLECTIONであるべきかなと思うので。完成形ってないですよね。変化していくものというか。

どこまでいっても、STYLING COLLECTIONはコンテストだと思っているので、コンテストって、自分との戦いとか、自分と見つめ合う時間とか。どんな時代になっても、人が成長するのは昨日の自分を超える瞬間というか、そういったことを体感できるのが競技会やコンテストだと思うので、ここは絶対にどんな時代でも、そこを大事にしているという根幹がSTYLING COLLECTIONの中にありながら、いろんな種目やイベント性や表現の仕方は、常にその時代に合わせて変化させていくものではないかなと思います。

そこに脈々と流れているのがSPCの経営者の人たち。「人を育てる」という想いというのが血流のように流れる。それでSTYLING COLLECTIONが成り立っているという結論にいたった気がします。